「債務整理を考えているけど、クレジットカードが使えなくなるのは困る…」こんな悩みを持っている人は結構いらっしゃるのではないでしょうか。債務整理後にクレジットカードを使うことが出来るか、結論としては使うことは出来ます。但し、今持っているカードは一度諦めなければなりません。また、実際にクレジットカードを使えるようになるのは、完済後5~10年程度待つ必要があります。
この記事では、借金に関わる色々な悩みや疑問に対して、皆さんの助けになれればと仕組みや知っておいて欲しい情報を紹介してきました。今回は、債務整理後のクレジットカードについて紹介していきたいと思います。
以前にも紹介したように、債務整理には一般的に広く知られている自己破産だけでなく、いくつか種類があります。それぞれのケースで、どのようにクレジットカードが使えるようになるのか見ていきたいと思います。
Contents
自己破産の場合
自己破産の場合、借金は免責=0となっているので、自己破産が認められた時点で借金は完済したことになります。これは非常に重要なことで、基本的に完済してから規定の期間が経過しないと、個人信用情報調査機関の「事故情報」は消えません。自己破産の場合、自己破産をしてから10年後に再びクレジットカードを作ることが出来ます。
ただし、いくつか10年が経過した後でも気をつけなければいけないケースがあります。
自己破産をした際に借り入れをしていた会社及びそのグループ会社での申込み
個人信用情報調査機関から事故情報は消えても、それとは別にクレジットカード会社が独自に基準を設けて、一度債務整理を行った人に対して、貸し付けを行わないという規定を設けている場合があります。いわゆる「社内ブラック」と呼ばれるケースです。
純粋な審査基準
当然ですが、信用調査機関の事故情報がなくなっても、クレジットカード発行に際して、再度審査を行われます。そのため、そもそも返済能力があるか(収入、職業、在籍歴、居住歴等)を審査されますので、信用調査機関に問題がなくなったからと言ってクレジットカードが必ず発行されるわけではありません。また、債務整理の種類の記事でも紹介したように、自己破産は官報に載ります。そのため、一度「自己破産をしたことがあること」や自己破産を行った金額等は残るため、審査に影響が出るということも覚えておいた方がいいと思います。
10年後のカード審査に落ちた場合
さらに、10年経過後にクレジットカードを申込み、残念ながら審査に落ちてしまった場合、申込みから6ヶ月以上経過していないと他の会社でも無条件に審査を落とされてしまうことがほとんどです。なお、6ヶ月経過後であれば、同じクレジットカード会社に申し込んでも、無事審査が通ったという場合もあります。これは「スコアリング」という収入以外も含めた各項目を得点化しており、6ヶ月経過したことで在籍年数や居住歴が更新され、結果的に審査合格基準に達したことが考えられます。もちろん、この場合は前回落ちた際にかなり惜しいスコアで落ちたということが前提で、昇進や昇給等ではなく、在籍年数や居住歴のみで大幅にスコアリングが上がるということは期待しない方が良さそうです。事故情報が消えた後にクレジットカードを申し込む際には、自己破産に限らず、まずは事故情報を解除すること、そして、出来るだけ返済能力を上げて審査を通りやすくするしかありません。
ブラックリスト化と与信調査
ちなみに、この「事故情報」というのが、いわゆる「ブラックリスト化」ということです。これも何回か紹介している通り、「ブラックリスト化」とはそのようなリストが存在するわけではなく、この「事故情報」が個人情報調査機関に残ってしまうことです。なお、延滞も事故情報として登録されますので、債務整理をしていなくても新規のクレジットカードが作れない、ローンが通らないケースにも注意が必要です。また、クレジットカードを作るときやローンの審査をするとき、そのクレジット会社やローン会社が「この人は本当に返せるのかな」と返済能力を調査する事を「与信調査」と言います。この与信調査を行う際に、情報を照会するのがこの個人信用情報調査機関と呼ばれる会社です。
会社で営業職や経理職を担当したことがある方は、取引先の与信調査を行った経験がある方もいると思います。このときも様々な視点で調査を行うと思いますが、調査会社の信用情報を参考にすることが多いのではないでしょうか。こうした調査会社は、法人の信用情報を扱っており、今回取り上げている信用情報調査機関はこれの個人版として、個人の信用情報を扱っているのです。
個人信用情報調査機関の種類
個人信用情報調査機関として挙げられるのは主に以下の3社です。
・指定信用情報機関(CIC) クレジット会社系
・日本信用情報機構(JICC) 消費者金融系
・全国銀行個人情報センター(KSC) 銀行・信用金庫系
与信調査を行う際に、クレジット会社が上記3社の中でどこに与信調査を行うかというのが非常に重要となってきます。例えば、先の自己破産の場合、登録情報が消えるまでの期間はCICとJICCでは5年、KSCでは10年となっています。そのため、理屈としてはCICやJICCのみに与信調査を行うクレジット会社であれば、5年後でも作れる可能性があります。しかし、ほとんどの会社がKSCにも照会を行うため、自己破産5年後でクレジットカードを取得したケースとしては、現在の返済能力を重視するアメックスやシティカード等の外資系のクレジット会社が挙げられます。ただし、アメックスカードでも日本カード会社が審査を行う会社もあるので、セゾンやMUFGのアメックスではどちらにせよ難しいかもしれません。
個人再生の場合
個人再生の場合も、クレジットカードが作れるようになるのは、基本的に完済後10年となります。各情報調査期間の登録が消えるまでの期間は、CICが登録なし、JICCが5年、KSCが10年です。ですので、先程の自己破産と同様に基本的には10年となります。
ただし、個人再生の場合は自己破産と異なり、大幅に減額されたとは言え、返済が残ります。返済完了から10年ですので、実際にクレジットカードを使えるようになるのは、自己破産の場合よりも長くなります。また、個人再生と同様に官報に載ります。ほとんどクレジット会社が独自に官報情報を記録しているため、過去に個人再生を行ったことがあるということをクレジット会社は認識していると思っておいた方が無難です。
また、これは個人再生に限った話ではないのですが、規定の年数が経過した際にちゃんと自分の記録が綺麗になっているか、事故情報が消えているかを自身で確認することも有効です。と言うのも、引っ越し等で情報が途絶えていたり、事故情報の登録が消えていなかったり、残債が残っている記録のままになっていることで審査NGとなってしまう場合があります。先述の通り、どういった理由であれ、一度審査に落ちてしまうと半年間はほぼ通らなくなってしまうため、確実にクレジットカードを取得したい場合は、確認しておくことをお勧めします。
なお、一般の個人でも信用情報の請求を行うことは可能で、各調査会社の窓口や郵送、インターネットで申し込むことが可能です。
※KSCは郵送のみの対応となります。開示手数料は基本的に1,000円ですが、CICやJICCの窓口で開示請求を行う場合は開示手数料が500円と安くなっています。
特定調停の場合
特定調停の場合は、完済から5年後にクレジットカードを作ることが出来ます。特定調停は、あくまで調停を裁判所にお願いする形のため、自己破産や個人再生とは性質が異なり、官報への記載はありません。信用調査会社ごとの登録期間では、CICとKSCは取引終了から5年間、JICCでは申し立てから5年を超えない範囲となっています。
任意整理の場合
任意整理の場合も、5年間は事故情報が消えません。CICは任意整理の情報登録はなく、JICCとKSCは事故情報が消えるのは完済後から5年後となります。
過払い金請求の場合
過払い金請求の場合は、原則信用情報に登録されません。ただし、過払い金請求後にまだ返済が残る場合には「任意整理」扱いとなり、事故情報が登録されます。そのため、完済後の過払い金請求や、過払い金請求を行った結果、残りの借金が過払い金で相殺され0となっている場合は信用情報に残らないというわけです。
カードを残すことは出来る?
ところで、今までは完済後のクレジットカードの話をしていましたが、現在手元に残っているカードはどうなるのでしょうか。結論としては、任意整理の場合に限り、残債がほとんどないもしくは残債がないカードや、未使用のカードは手元に残すことが出来ます。任意整理以外の方法の場合は、借金やクレジットカードの情報は全て開示しなければならないため、意図的に債務整理の対象から外すことが出来ません。
ただ、任意整理で手元に残したカードを一時的に使うことは出来たとしても、遠くない内に使えなくなります。なぜならば、クレジットカード会社は定期的に与信調査を行うからです。この頻度は会社によって違うため、当分は使えるかもしれません。それでも、クレジットカードには期限があるため、更新の際には必ず与信調査を行います。その際に、CICのみの調査でなければ任意整理した情報が残るため、クレジットカードの更新は出来ず、そのカードは使えなくなります。また、会社によっては、半年に1回や1年に1回などの頻度で与信調査を行う会社もあります。そうした会社ではその時点で任意整理の履歴(正確には債務整理をした記録)が残るため、その時点でカードが使える通知が来ます。
クレジットカードが使えない場合の対処方法
ここで一つ紹介しておきたいのが、債務整理後のようにクレジットカードが使えない状態で、手元にお金があれば出来る方法について紹介したいと思います。債務整理後、信用機関の事故情報が消えるまでの間、既に収支のバランスが健全化していることはよくあるケースだと思います。また、普通に与信情報的に問題ない方で、クレジットカードはあまり作りたくないという方もいるでしょう。
そういった方にお勧めなのが「デビットカード」です。聞いたことはあるけど、よく知らないという方も多いかと思います。デビットカードの仕組みは、銀行の口座から使ったその時点で引き落とされるということです。当然、口座に預金がなければ使えませんので、与信調査は行いません。そのため、発行に審査は必要なく、必要なのはデビットカードに対応した銀行口座です。
また、デビットカードには、J-DebitというタイプとVISA等のクレジット会社のものがあります。J-Debitのデビットカードは最短で即時発行出来るというメリットがありますが、J-Debit加盟店でしか利用が出来ません。他方、VISA-Debitカードであれば、発行までに1週間程度要しますが、VISAのクレジットカードが使える場合であればほぼ使用可能です。もちろん、JCBであればJCBのカードが使える店舗等で使用が可能です。
「ほぼ」というのは、一部のインターネット支払いやセルフのガソリンスタンドなどクレジットカード使用可でもデビットカードの利用が不可となっている場合がありますので、注意が必要です。デビットカードは、支払う際に現金を使うのか、銀行口座に入っているお金を使うのかだけの違いで、ポイントがつくシステムやその他いくつかの特典を設けている銀行が多いため、ご存じない方はぜひ一度自分のメインバンクでのデビットカードについて調べてみることをお勧めします。
最後に・・・
債務整理後にクレジットカードは使うことは出来ますが、基本的には完済後5~10年後という形となります。任意整理の場合で、残債がないもしくは僅かな額の場合は手元に残すことが出来ますが、どんなに長くても期限後の更新を断れてしまい、以後使うことが出来ません。また、クレジット会社によっては、半年に1回や1年に1回というように比較的頻繁に与信調査を行う会社もあるため、手元に残しておいたとしてもすぐに使えなくなるケースも考えられます。そのため、債務整理後にクレジットカードを使うためには、債務整理に対応した期間経過後に、一度自身で個人信用情報調査機関に与信情報の確認をした上で申し込むのが最適です。
それでもすぐにでもカードが欲しい方には、クレジットカードに似た使い方が出来るデビットカードがあります。デビットカードはあくまでも銀行口座の残高から支払われるため、お金そのものは必要となりますが、ポイントが付与されたり銀行口座の手数料優遇など特典があります。また、インターネットでのショッピングでも使用できるケースが多く、代金引換の手数料や銀行振込の手数料を抑えることも出来ます。与信調査は関係なく、単純に手元の現金で払うか、銀行口座のお金で払うかの違いですので、上手く活用してもらえればと思います。
この記事が、借金問題で悩む皆さんのお力になれば幸いです。