ヤミ金というのは、銀行などの金融機関やかつてサラ金と呼ばれていた消費者金融に対して裏にあたる金融業者です。正式には認められていない非合法の金融業者にあたります。もちろん出資法の金利規制などは完全に無視しています。
よくいわれる「トイチ」10日で1割の金利を取るのはまだしも10日で3割や5割の高金利でお金を貸し付けるのです。そんな高い金利の業者からお金を借りるわけがないと思っていてもヤミ金がターゲットにしている多重債務者は、常にたくさんの返済をかかえています。お金を借りなくては、返済が滞ることになります。
しかし、多重債務をしているとお金を貸してくれる業者がなかなかありません。手元の生活資金がみるみる枯渇していく中、ついついヤミ金に手を出してしまうのです。
ヤミ金との契約はどんなものなのか、ヤミ金の脅しの手口やヤミ金に借金すると返済義務はあるのか?などについて解説していきたいと思います。
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金銭貸借契約書(借用書)とは?
金銭貸借契約書には金銭消費貸借契約書と借用書の2種類あり、金銭消費貸借契約書は貸主と借主の双方の合意の元で貸し借りが行われるということで署名も双方が行い契約書も2通作り、双方が1通ずつ保管します。
しかし、借用書は借りる方が貸す方に対して借りたことを認め、返すことを約束するという誓約書のため署名は借主のみの上1通のみの作成で貸主だけが保管するものです。
ヤミ金の事務所に行くとたいてい電話やDMなどで謳っていた低金利ではなく、まったく違う高額な金利でお金を貸そうとしてきます。
まずは、お金を借りる契約書にあたる金銭貸借契約書(借用書)で契約をさせられます。しかし、この借用書は借り手には渡されることはありません。まともな金融業者であれば借用書を渡すのが当たり前ですが、ヤミ金は違法な金利と分かって貸すことになります。ですので、借金に関する証拠を残すわけにはいかないので、借り手に借用書が渡されることがないのです。
また、たとえば5万円を借りた場合、実際には5万円が受け取れるわけではないのです。
事務手数料や書類作成料といって5千円や1万円を差し引くことになるのです。結局は、5万円借りたことになっていても手にするのは少額なお金になります。
それにもかかわらず、借り手からは5万円の領収書を取るのです。そして、返済ができずにトラブルになった時には領収書が証拠とされるのです。もちろん、事務手数料や書類作成料の領収書が渡されることはありません。
借用書の他にもたくさんの書類に署名と捺印をさせられることになります。
例えば、公正証書を作成するための白紙の委任状、借り手が事業者であるならば内容が白紙の債券譲渡通知書、家を持っている人には住居の明け渡し同意書、電話加入権の譲渡書、弁護士不介入同意書などです。
住所と氏名を書かされて実印まで押させます。内容はほとんど白紙になっているので、返済が滞ったらこれらの書類で脅されることになるのです。
また、他社からの借り入れ状況も書かされます。「借り入れ件数は正直に書かないと、情報を照合すればすぐわかる」といって、その人がどれだけお金に困っているのかを確認して弱みを握るためです。
なかなか正直に全部書く人はいないので「隠してもだめだよ。あちこちで借りまくってますね。」などと言葉たくみに言われると、ついしどろもどろになってバレてしまいます。そうなったら相手の思うツボです。
貸金業協会に加入しているヤミ金ならば、他社の何社からどのくらいのお金を借り入れているかわかりますが、モグリのヤミ金ならば情報は分からないのです。単にカマをかけているだけなのです
また、住民票、印鑑証明書、健康保険証、免許証、年金手帳も渡すこともあります。
借り手のありとあらゆる個人情報がヤミ金業者の手に渡ることになるのです。
ヤミ金は闇金と漢字で書くように、自分たちが行っていることは犯罪であると分かっています。出資法に違反した高金利でお金を貸しているので、捕まると刑事罰がかされることになるのはよく知っています。
できるだけ警察に見つからないように、証拠を残さない巧妙な手口を使ってお金を貸しているのです。
ヤミ金業者の脅しのネタになる
ヤミ金業者は「審査のため」と称して借入申込書に住所、氏名、生年月日、勤務先のほかにも配偶者や親、兄弟、親戚の住所・電話番号・勤務先も書かせます。まともな金融業者ならばやってはいけないことです。これは本人がお金を返せなかった時に違法に返済を迫るための重要な情報源となるからです。
お金の返済が滞った時は、ヤミ金の回収手段はまず電話によるものです。電話をかける相手は、借り手本人の他にも借入申込書で知り得た情報がいかされます。
配偶者、親、兄弟、親戚、勤務先など広範囲にわたります。なかには子どもの学校、借り手が住んでいるアパートの住民、借り手の行きつけの店にも電話をかけてジワジワと心理的に追い詰めていきます。本人や家族もノイローゼになるくらいです。
実は、このような無謀な取り立ては、貸金業規制法では禁止されています。しかし、訴えられることはないと思っているのです。もちろん家族、親戚、勤務先や周囲の人びとには支払義務などありません。
しかし、広範囲にわたる電話で周囲の人びとに借金をしていることがバレ、会社を解雇、離婚、引越しを余儀なくされることもあるのです。
また、結婚している場合は、夫や妻は借金のことを知っているのかと執拗に聞いてきます。もし夫や妻に内緒だと言うと、ヤミ金業者にとって有益な情報になります。まともな金融機関である場合、配偶者には内緒でお金は貸せません。
返済が滞ると「旦那(妻)に連絡するぞ!」というだけで、借り手は配偶者にはバレたくないがために、必死に金策にあたるのです。ヤミ金は、借り手本人がお金を持っていないことが分かっています。親、親戚、友人、知人など、借り手にどこからお金を持ってこさそうかと常に考えているのです。
しかし、直接取り立てに行くことはヤミ金業者にとってリスクが高い行為になります。
なぜならば、居座ると不退去罪、脅して返済を迫れば脅迫罪、傷害罪、暴行罪など様々な刑事犯罪のリスクがあるからです。
返済義務を無効にできるケース
ヤミ金融は出資法を違反しており、貸金業規制法も違反しています。10日で3割や5割の高金利を取るのは公序良俗に違反しているので契約自体が無効になるのです。ヤミ金から受け取ったお金は「不法原因給付」となるので返す必要がないのです。
ヤミ金がお金を貸すこと自体が「不法の原因」となり、借りたお金の元金も返還の請求もすることができないのです。ですので、ヤミ金から返済するよう連絡がきたら、「不法原因給付」を持ち出して、一切払わないと意思を示すことが最も効果的です。
借りたお金は返すものという考え方は、ヤミ金には通用しないと覚えておいてください。ヤミ金は、裁判で勝つことができないので、訴訟を起こすことはありません。
弁護士などに相談すると、受任通知や警告書が届いた時点で取り立てをあきらめるヤミ金が多いのが原状です。もし、取り立てに来ても警察に通報すれば対処してくれます。
ヤミ金業者を有利にしてしまうケース(契約の注意点)
一度ヤミ金とかかわると、ありとあらゆる手を使ってお金を取ろうと考えます。
例えば脅されて借金を作らされ、その借金を払っていたら急に今月中に払えと言われたので知り合いに相談したところ、借用書を取り返してもらいました。やれやれと思ったのもつかの間、その知り合いというのがヤミ金だったのです。お前のために働いて仕事が止まったから、迷惑料を払えと言ってくるケースがありました。
その他にも、昔ヤミ金に手を出したことがあったのですが、今頃になってニセの借用書を持って脅しに来たということもあります。本人は全く身に覚えがないのに、数百万円の借金になっているのです。おそらく昔ヤミ金を利用した時に書いた署名や捺印の部分を偽造してニセの借用書を作ったようです。
ヤミ金からおかねを借りたことはないのに、しつこく勧誘が続くケースもあります。
ヤミ金と知らずにお金を借りようとして電話番号や住所を教えてしまったのです。結局お金は借りませんでしたが、1日に数回も融資の勧誘の電話があるのです。
一度ヤミ金にかかわってしまう、個人情報を教えてしまうと大変な目に合うことが分かると思います。
その他にも年金受給者も狙われています。
ヤミ金業者が「年金立替え」や「年金融資」と謳っている広告があります。
契約をする時に、年金証書や銀行の預金通帳、銀行印、キャッシュカードを預けることになります。年金を担保にとって融資するのです。
年金を担保に融資することは違法にあたります。このような条件の融資は公的な年金福祉事業団のような金融機関だけになりますので、注意してください。
万が一、判を押してしまっていたら・・・(最悪のケースの対策)
万が一、ヤミ金業者と契約してしまった場合は、返済が滞ると執拗で恐ろしい取り立てが待っています。個人で対抗するには限度があり、無視し続けるのも耐えられるものではありません。
確実にヤミ金業者の取り立てを阻止するためには、法の専門家である弁護士に相談することです。弁護士に相談して手続きを依頼しておけば、ヤミ金業者がいやがらせに来ても、素早い対応をしてもらえます。警察に被害届を出すことになっても、個人で出すのと弁護士が出すのでは対応が全く違うのです。
弁護士がヤミ金問題の依頼を受けてまずすることは、「介入通知」をヤミ金業者に送付します。内容は、弁護士が依頼人の借金整理の代理人になったこと、今後は本人やその他の関係者に連絡してはいけないこと、ヤミ金からの借金契約は出資法違反で無効なので依頼人に返済義務はないこと、すでに依頼人が返済した金額は返還を請求すること、請求に応じない場合は刑事告訴することといったものです。
「介入通知」をヤミ金業者が受け取るとたいていは取り立てが終わりますが、中には無視をしてしつこく取り立てを続けるヤミ金業者もあります。このような場合は、弁護士がヤミ金業者に直接電話をして取り立てをやめるように警告することになります。
それでも取り立てをやめないようならば、警察に通報するか刑事告訴する方法をとることになります。
最後・・・
一度ヤミ金業者と契約してしまうと、ほとんどの個人情報を握られることになります。
返済が滞ると取り立ては、執拗で周囲の人にも迷惑をかけてしまいます。ヤミ金は出資法も貸金業規制法も違反しているので、本来ならば契約自体が無効なのです。
しかし、多くの人は苦しい返済から逃れるために夜逃げなどに走ってしまいます。夜逃げをすると生活資金はさらに苦しくなり、結局は消費者金融や別のヤミ金業者から借金することになります。
借金をすると情報が共有されるので、最初に借金をしていたヤミ金業者に居所をつかまれて取り立てられることになるのです。
ヤミ金にかかわってしまったら、専門家の弁護士に相談するべきです。その他にも日本全国に相談できる窓口があります。弁護士会、司法書士会、法テラス、被害者の会などです。一人でかかえこまないで、専門家の力を借りるのも一つの方法です。