借金が膨らみすぎて、いよいよ債務整理をせざるを得なくなっていても、家族に迷惑がかかるからと二の足を踏んでしまうひともいるでしょう。特に、自分が世帯主であれば、妻や子供たちへの影響を考えないひとはないのではないでしょうか?
ここでは、債務整理の概要と、世帯主である親が債務整理をおこなった場合、子供に与える影響について解説していきたいと思います。
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債務整理とは?
「債務整理」とは、借金(債務)を片付ける(整理する)ことです。借金が膨らんでしまって、どうがんばっても返すことのできなくなったひとが、直接または公的機関を通して債権者と交渉し、借金の返済負担を減らしてもらう制度です。借金の整理方法には3つの方法があります。
・任意整理
裁判所をとおさずに債権者と交渉をして、借金を減らしてもらう方法です。いわゆる、和解交渉・示談交渉に該当するものです。
複数の債務がある場合は、債務を選択して整理することができます。借金がなくなるわけではありませんから、以後安定して収入が見込めるひとに向いています。官報(※)には掲載されません。弁護士と司法書士が手続きをおこなえます。ただし、司法書士は個別債権1社につき140万円までしか取り扱えませんので注意してください。複数社に借金があり、それぞれ140万円以下で合計が140万円という場合は、取り扱い可能です。
・個人再生
裁判所に申立てをおこない、借金を「100万円もしくは借金総額の5分の1」にまで減らしてもらう方法です。再生計画を立て、それに基づき、減らした借金を原則3年かけて返済することを条件に、残りの借金が免除されます。借金がなくなるわけではありませんから、以後安定して収入が見込めるひとに向いています。官報に掲載されます。弁護士が手続きをおこなえます。
・自己破産
裁判所に破産申立てをおこない、借金を免除してもらう方法です。全ての借金がいきなり免除になるのではなく、まず債務者の全財産を債権者に分配します。それでも返済できず残った借金が免除されます。今後どうがんばっても、借金を返せる見込みが立たないひとに向いています。官報に掲載されます。弁護士が手続きをおこなえます。
(※)官報とは・・・
国が発行している新聞のようなものです。
法律・政令・条約などの公布を国民に知らせるために発行していますす。
そのほかにも会社の決算や破産、再生に関する事項、個人の自己破産や個人再生に関する事項も掲載されています。
債務整理をしたら、給料は差し押さえられる?
債務整理をすると債権者により給料が差し押さえられてしまい、収入がなくなってしまうのではないかと心配しているひともいるかもしれませんね。しかし、債務整理をしたからといって、給料が差し押さえられてしまうことはほどんどありません。むしろ、遅延をして督促がきていているにも関わらず、放置したままにしておくことの方が問題です。「強制執行」がおこなわれ、給料が差し押さえられてしまう可能性があります。この場合の「強制執行」とは債権者の申立てにより、債務者の給料や賞与が差し押さえられることをいいます。だだし、給料の全額が差し押さえられてしまうわけではありません。生活に最低限必要な給料を差し押さえることは法律で禁じられています(差押禁止債権)ので、具体的には原則、手取り分の4分の1までが差し押さえられてしまいます。
もしも、裁判所から「支払督促」が届いたら、直ちに弁護士に相談するようにしてください。
「支払督促」を2週間放置して何もしなければ、裁判所が「仮執行宣言」を発付し、債権者による強制執行が可能になります。
また裁判所から勤務先に「差押命令」が送られますので、勤務先にも借金を滞納している事実が知られてしまいます。
債務整理をしたら銀行口座はどうなる?
カードローンや住宅ローンなど銀行からの債務が債務整理の対象となった場合、債務者が持っているその銀行の口座は「凍結」されてしまいます。「銀行口座の凍結」とは、入金は出来ますが、出金が一切できなくなってしまうことです。要は、債務整理をされると、とりっぱぐれてしまうために、口座からお金を引き出せないようにして、返してもらっていない分と相殺してしまおうというわけです。
凍結がおこなわれるタイミングは、銀行が弁護士(または司法書士)から「受任通知」を受け取ったときになります。
「受任通知」とは弁護士(または司法書士)が介入して、債務者の代理人として債務整理をおこなうことになった旨を債権者に知らせるためのものです。
もしこの口座が給料の振り込まれる口座だとしたら、生活費も下ろせなくなってしまいますから大変困りますね。
そこで通常、債務整理をおこなう前に、銀行口座からの預金を全て引き出し、給与振込みの口座や公共料金が引き落とされる口座を債務整理の対象とならない口座に変更することをすすめられるはずです。
では、凍結した口座が再び使えるようになるのはいつでしょうか?
それは、保証会社が代位弁財をおこなった以降になります。
「保証会社」とは、債務者がローンを払えなくなった場合に、支払いを肩代わりする会社です。
肩代わりするといっても、債務者の返済義務がなくなる分けではありません。
肩代わりしてもらった分は保証会社に返す必要があります。
銀行に受任通知が届いてから、代位弁済がおこなわれるまでの期間は、保証会社によって異なります。
親が債務整理をしたら子供の銀行口座はどうなる?
債務整理は、原則、債務整理をおこなった本人にのみ適応されるものです。ですから、本人名義の銀行口座については、先に説明した凍結といった事態も考えられますが、子供名義の口座についての影響はありません。ただし、子供がまだ幼いケースなどで、口座にはいっているお金が、明らかに子供本人のものでない場合は影響が出る可能性があります。例えば、子供がコツコツ貯めたおこずかいやお年玉であれば、それは子供のお金です。
しかし、親が子供の名義で口座をつくりそこに自分のお金を預けているのであれば、それは親のお金とみなされる場合があります。特に自己破産の場合、申立人本人の財産は、債権者に分配しなければならないというルールがあります。財産隠しのために、子供名義の口座にお金を移すような行為をしていれば、「免責不可事由(※)」にあたり、免責が許可されない可能性もあります。
債務整理をする前にうかつな行動はとらないよう、注意してください。
「免責不可事由」とは・・・
債務者が借金を返済できなくなった理由に妥当性がない場合のその理由のこと。
ギャンブルや過度の浪費などが該当する。
親が債務整理をしたら、子供の学校にバレる?
債務整理をすると、子供の学校にバレて子供が恥ずかしい思いをする、いじめにあうといった噂があるようですが、そのようなことはありませんので心配しなくても大丈夫です。確かに個人再生、自己破産は官報に掲載されますので、第三者がその事実を知る機会があります。官報とは国が発行している新聞のようなものです。ですが、一般の新聞のように毎日の生活のなかで、ごく当たり前に目に触れるといった類のものではありません。むしろ、一度も見たことがないというひとの方が多いかもしれません。
ですから、債務整理による官報掲載による、子供の学校に関して生じるリスクはあまり気にしなくてもよいレベルです。
親が債務整理をしたら、子供の奨学金受給はどうなる?
奨学金制度とは、学習意欲があっても経済的な問題で進学が難しい学生に対して、学費や生活費を支援してくれる制度です。公的なものと民間の団体や企業が実施しているものがあり、給付型と貸与型の2種類があります。貸与型の奨学金の場合は、社会人になってから、一定期間をかけて返済をしていくことになります。貸与型の奨学金では、日本学生支援機構の奨学金制度(日本育英会)が最も利用者が多いです。
貸与型奨学金の給付を受ける場合、連帯保証人および保証人をたてる必要があります。多くの場合、親や親戚が連帯保証人や保証人になることが多いです。しかし、債務整理をしたひとは、個人信用情報にその実績が残っているため、いわゆるブラックリストと扱われてしまいますので、連帯保証人や保証人になるための審査にとおらない可能性が高くなります。
また、子供が奨学金を受給中に親が債務整理をおこなうことになった場合、親が連帯保証人(保証人)になっているいるのであれば、別の連帯保証人(保証人)をたてる必要があります。もしも、代わりになってくれるひとがいない場合は、 保証料はかかりますが保証機関(協会)を利用することが可能です。
親が債務整理をしたら、子供はクレジットカードを作れる?
基本、親が債務整理をしてブラックリストになったからといって、子供もブラック扱いされて、クレジットカードが作れないということはありません。しかし、未成年者や学生がクレジットカードを作るとなるとちょっと事情は変わってきます。未成年や学生がクレジットカードを作る際には、親の同意を必要とするカード会社があります。クレジットカードの審査は、全ての会社が同一のルールでおこなわれているわけではありませんので、一概に言い切れるものではありませんが、この場合は、親がブラックリストであることを理由に、子供が審査に落ちてしまう可能性が極めて高くなります。また、債務整理をしていなくても、親がそのカード会社で遅延実績がある場合などでも、カード会社独自に保存している情報から、その子供についても信用が得られずカードが作れないということも有り得ます。
最後に・・・
家族に内緒で債務整理をしたいというひともいますが、ここで説明したような影響を考えると、もしも隠していたとしたしても何かのきっかけで知られてしまう可能性の方が高いことは理解できたと思います。借金の原因が何であれ、家族に正直に話をして協力を仰いだほうが、精神的な負担ははるかに軽減されるでしょう。