借金返済の悩み。本当にこれは頭が痛い問題です。なぜならば、これは本人の気持ち的に「後ろめたい」問題だからです。
「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉がある通り、「お金の管理が出来ない」=「社会不適合者」のような扱いを受けているような気になります。あるいは、実際にそのように扱われていなくても、世の中の多くのものにお金が必要であるため、実生活で必要なものが買えなくない、サービスが受けられなくなり、いよいよとなれば生活出来なくなります。私も「多重債務者」として、何度もこうした「追い詰められた気持ち」に追い込まれました。
しかし、借金返済や債務整理の話は、家族や友人には相談しにくくても、それを専門に行っている人がいます。根本的な問題解決につながらないと分かっていても借金を繰り返す。困り果てた挙句に再び借金するアクションと、専門家に相談しようと一歩踏み出すアクション。この二つに必要な「一歩踏み出す勇気」はあまり変わらないと思います。
新しい借入先から借りるとき、それなりに逼迫した状況の中、審査が通るかわからず、また、審査が通ってもいつ入金されるのか…不安は絶えません。そもそも、いくらネットで完結出来るところが増えたと言っても借入の申請はそれなりに入力する内容がヘビィなで面倒臭い手続きが必要です。そのときのことを思い出し、踏み出す勇気の向け先を少し変えてみるだけで、未来を大きく変えることが出来るかもしれません。
ここまでの記事では「債務整理の種類」、そして、「それぞれの債務整理に合ったパターン」を紹介してきました。
今回は、いよいよ実際にあなたがアクションを起こすときのお話です。
「どこに相談すればいいのか?」いざ、相談してみようと思ったとき、実は選択肢が多いことに気づくと思います。今回はそれぞれの相談先の特徴を紹介していきたいと思います。
Contents
弁護士への相談
過払い金請求や債務整理、特に最近は過払い金請求のCMで、「過払い金請求と言えば弁護士に」という印象が強い方も多いと思います。債務整理の相談先として真っ先に思いつくのが弁護士、という方が多いのではないでしょうか。弁護士は、過払い金の請求から、各貸金業者との交渉、裁判所への書類の用意、やり取りの代行と、正に債務整理のプロです。もっと正確に言えば、法律の専門家で、裁判の有無に問わず問題解決のエキスパートです。その業務の一部が債務整理ですので、当然債務整理関連以外の法律、判例にも精通しており、相談相手としてこの上なく強力な存在と言えるでしょう。
弁護士に相談する上で気をつけなければならないこと
但し、非常に強力な存在であることには違いませんが、では無条件に弁護士がいいかと言うと、そうとも限らない場合があります。
①費用
弁護士事務所も相当数ありますので、一概には言えませんが、弁護士の費用は相対的に高めです。先述の通り、彼らは債務整理以外にも裁判の弁護人としての業務など、法律のプロという時点で仕事はたくさんあり、どれも専門性が強く、非常に差別化されています。つまり、強力な存在であればあるほど、相対的にその人の価値は上がり、その人の時間を拘束する(面談や仕事を頼むこと)ためには相応の対価(報酬)が必要です。
そのため、相談する前にホームページ等に載っている料金や条件は事前によく確認しておくことをお勧めします。彼らは「困っている人を助けたい」と慈善事業をやっているわけではありません。「困っている人を助けたい」という気持ちは当然あると思いますが、彼らは仕事でやっているため、無制限にあなただけに注力してくれるわけではないのです。
②対応してもらえる時間
もし、裁判所を通す債務整理(特別調停、個人再生、自己破産)を選択することになった場合、裁判所は平日のみで当然夜間などはやっていません。それに準じて弁護士事務所も対応する時間を決めているところも多いので、いくら費用面が魅力的でも日々のやり取りが不自由では結果的に進捗が滞ってしまうかもしれません。例えば、普段仕事があるならば、仕事終わりに寄りやすい職場の近く。あるいは、時間外対応が可能なところ、メールでのやり取りをメインとしているところなど、自身のリアルな日々の生活を行いながら、自分が弁護士とのやり取りをしていることをイメージしながら選定していくのがいいと思います。
『選ぶ』だけでなく、『選ばれる』側の考え方も
ただ、少し調べればたくさんの弁護士事務所が出てくるように、費用も対応時間もかなりバラツキがあります。また、先ほども書いたように、「仕事」としてやっている以上、そこには市場原理が働きます。つまり、人気があるところ(安い、柔軟な対応可、通いやすい or メール対応が早い、実績豊富、etc…)はそれだけ依頼者が殺到し、その分「依頼者を選びやすい」環境になります。
もちろん、「依頼者を選ぶ」と言うのは、依頼者の「容姿」や「懐具合」の話ではありません。どれだけ依頼者の「案件」から報酬が取れるかです。債務整理の相談に来ている依頼者に「懐具合」に期待しても、無い袖は振れないことは弁護士も理解しています。
但し、例えば、300万円の過払い金が取れそうな案件と、50万の任意整理案件では、扱われ方が変わることが多いでしょう。
(※記載金額は例えですので、実際の相場とは関係ありません)
司法書士への相談
次の相談先の候補は、司法書士です。「弁護士・司法書士事務所」という言い方を耳にすることがあると思いますが、弁護士と司法書士は別な職業で、可能な業務に違いがあります。司法書士は、弁護士の業務の内、登記のみを行うのが元々の業務でしたが、現在は140万円以下に限り、法律相談・交渉・訴訟対応が可能になりました。
140万円問題
何気なく「140万円」と書きましたが、皆さん疑問は湧かなかったでしょうか。これは会社ごとの金額なのか債務の合計額なのか。債務整理の結果、減額した分の額なのか債務額そのものなのか。実はこれ、大論争を巻き起こしていました。過払い金ビジネスで身近になった債務整理の話に、弁護士と司法書士がお互いに顧客を取り合う様相を織り成し、最終的には、この論点について最高裁で判決が出ています。ネット上を見ると色々な意見が書いてあると思いますが、筆者は2016年の最高裁判決に基づいて書いています。
・140万円は個別の会社ごと
※但し、過払い金については言及されていない。
・140万円は減額ではなく、債務額
これが大枠のルールとなりました。しかし、これでもまだまだ「過払い金はどうなんだ」ということや、特別調停の場合は減額分での適用がされていたりと細かいところはなんとも言えません。と言うよりは、法律そのものがそういう作り方をされています。大枠が決められ、解釈の余地がある部分での認識の違いや、時代の変化とともに法律で触れられていないような新しいパターンは判例によってその根拠を得ています。余談ですが、判例のないケースの判決を出す裁判官や、判例とは異なる判決を出す裁判官は相当な決断だと思います。結局、裁判というのは、法律と過去の判例に従って、勝てる可能性を手繰り寄せる訳ですが、最終的な決着がつくまでは100%はありません。これもよく覚えておいて欲しいと思います。
司法書士へ相談するメリットと注意点
司法書士へ相談するメリットは、こちらも一概には言えませんが、弁護士と比較して相対的に費用が抑えやすいということです。但し、先述した金額の制限があります。また、140万円以下の案件であっても、扱えるのは「認定司法書士」だけです。認定司法書士になるには、所定の研修及び試験(簡裁訴訟代理能力認定考査)を経て、法務大臣の認定を受けることが必要です。ただ、そもそも、認定司法書士でない司法書士が債務整理の案件を扱うことは違法行為ですので、さすがにそういうところはないと思いますが、一応覚えておいてもらえたらと思います。
なお、先の140万円を超える案件でも、弁護士と連携して、あくまで司法書士事務所を窓口として完結させているところもあります。
総合的に費用を抑えられる場合や、結局外部の弁護士にお願いするため総費用では高くなってしまう場合など様々です。弁護士事務所も司法書士事務所も多いので、よく条件を見て選びたいものです。ちなみに、先に書いた140万円に対して、「調整減額ではなく、債務額」という判決が下ったのは、調整後の結果に関わらず事前に対応の可否が判別出来るためです。実際に司法書士に依頼し、「140万以上の減額、過払い金が貰えるはずだったのに、司法書士が扱うために減額した」というケースを受けての判決だったと言われています。
法テラスへの相談
「法テラス」という言葉を聞いたことがある方はどのくらいいるでしょうか。私は債務整理の相談で、自身が相談に行くことになるまで知りませんでした。法テラスは、正式名称「日本司法支援センター」と言い、その愛称です。※愛称とは言え、公式が設定しているので、一般名称という方が正確でしょうか。国によって設立され、管轄は法務省所轄の公的な法人です。
法テラスの特徴
法テラス専属もしくは契約(外部)弁護士による無料相談が受けられることが特徴です。債務整理だけでなく、相続、離婚調停等法的トラブル全般を扱っています。一つのテーマに対して1回30分程度、3回まで無料相談が受けられます。さらに、無料相談からより詳しい話、本格的に弁護士に解決に向けての動きを依頼する場合、法テラスを経由してお願いすることで、弁護士・司法書士費用の分割払いの制度があります。
法テラスの利用条件は、一定額以上の収入及び一定額以下の資産です。それぞれの条件は、配偶者や同居家族の人数によって基準が設けられているので、ご自身の場合の条件は法テラスのホームページで確認してもらえればと思います。状況の整理、今後の方向性等、最初の相談窓口としては非常に利用しやすいと言えると思います。
最後に・・・
前回の借金返済・減額のパターンでは、それぞれの特徴が比較的ハッキリしていたため、比較的分かりやすかったと思います。しかし、例えば先ほどの弁護士事務所に相談する場合、インターネット検索などで出てきた色々な条件を見て、自分が「適している」と思える弁護士事務所を選べそうでしょうか。
実は、多重債務者とそうでない人の違いは、こうした「お金に対する意識」に違いにあるように思えてなりません。そして、それは使い方だけではありません。お金がないなら節約するしかない。確かにそれは真実ですが、例えば、1ヵ月1,000円で過ごすのはかなり無理が必要です。逆に、いくらあれば安心なのでしょうか。宝くじのように7億とか10億、それとも1兆円でしょうか?節約は確かに必要です。しかし、それは実は両輪の片側です。もう一つは「稼ぐ力」を養うこと。
さらに大事なこととしては、お金はその人に対する「信用」であり、未来のチャンスを掴むため(チャンスが来たときに投資できる)のものです。このあたりは、このシリーズを通して少しずつ触れていきたいと思いますので、今の時点では、「そんなこと書いてあったな」位の認識で構いません。自分なりに納得のお金の使い方が出来れば理想ですよね。