借金の悩みは、本人にとっては”八方塞がり”になったような錯覚に陥ります。友達や友人にお金の相談をするのは友情にヒビが入ってしまうかもしれない。家族はなおのこと心配かけられないですし、相談できません。借金の問題そのものついて考えるのも嫌ですし、どうすればいいかも分からない。ですが、その”八方塞がり”の感覚は”錯覚”です。もちろん、本人にとってその”八方塞がり”の感覚は本物です。ただ、それは必要な知識をしっかり身につけ、どうすればいいか自分で考えたり、しかるべき人に相談しながら考えていけば、道は必ず拓けるはずです。この記事では、なかなか人にも言えず、かといってどうしていいか分からない、そんな方の助けになればと債務整理について紹介していきます。
かく言う私も多重債務者でした。ただ、一つだけ言えるのは、「多重債務者」であることよりも、現在の状況や返済の目処が見えない「借金の悩み」の方が辛かったです。言い換えれば、今現在「多重債務者」として返済中の状態でも、実際に自身が動き出し、色々な方に協力頂きながら状況を整理し、返済への目処が立ったことで相当気持ちが楽になりました。今回は、借金返済や減額につながるパターンとどういった方が向いているかを紹介していきたいと思います。
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パターン1 過払い金請求
借金の返済及び借金の減額を行う上で、まず考えたいのがこの過払い金返還請求です。
これは前回の種類別の紹介でも書いたように、他の方法とは一線を画します。
他の4つの方法(任意整理・特定調停・個人再生・自己破産)は、何らかの形で貸金業者に対して任意もしくは強制的に返済金額もしくは返済条件の調整を依頼するものです。
他方で、過払い金請求はこちらの「権利」を主張するもので、いうなれば「返せなくなってしまうから…」という「後ろめたさ」のようなものは皆無です。
過払い金請求の対象
具体的に、過払い金請求が行うことが出来る可能性がある方は、2010年(平成22年)以前に借入があることが期間的な目安となります。そもそも、過払い金請求の仕組みは、過去、利息制限法と出資法という異なる上限利率の法律がどちらも適用されており、どちらでも当時はまかり通っていました。
これが、いわゆる「グレーゾーン金利」というものです。これに対して、2006年(平成18年)に貸金業法が大幅に改正、段階的な施行を経て、2010年に完全施行されました。この改正により、「総量規制」(借入総額を年収の1/3にする)などの新しい決まりがいくつか加わり、その一つとして、上限利息が引き下げられました。
この貸金業法改正前に、利息制限法(金額に応じて上限金利を設定)以上の高い金利で借りていた方が対象となります。
出資法で罰則が定められている金利の上限が29.2%なので、少なくても20%以上で借りている方は可能性が出てきます。
さらに、これも一概には言えませんが、遅延損害金に対しても上記とは別のルールですが、払いすぎている場合は対象になります。
過払い金請求が出来ない場合
一部の貸金業者は、貸金業法改正前から現行上限内の金利で貸し付けを行っています。こうした場合は、上記貸金業法改正前の期間での借り入れであっても、過払い金請求の対象とはなりません。また、消費者金融からの借り入れだけでなく、クレジットカードによる返済も一部対象となります。クレジットカードの場合、ショッピングは非対象で、キャッシング利用のみが対象となりますので、キャッシング利用の中で上記のような高金利のものがないか確認していくことになります。考え方としては、クレジットカードのショッピングというのは「支払いを建て替えてもらっている」形ですので、「お金を借りている」というのとは扱いが違うという形です。
さらに、請求できる期間にも制限があり、完済(最終取引)から10年間という条件があります。最終取引からの起算ですので、該当期間から借入が始まって現在も返済が続いている方も対象です。いずれにしても、過払い金に関しては、各社の借り入れの詳しい状況・条件を確認してからでないと、請求対象かは何とも言えません。
さらに、仮にグレーゾーン金利に該当する金利であっても、本当に戻ってくるのかは戻ってくるかは貸金業者との交渉結果次第です。
この交渉が上手くいかなかった場合、内容に納得がいかない場合は、裁判で訴訟を起こす流れとなります。このように、簡単な手続きではありませんが、これは過去高い金利で払い過ぎていたものを返してもらう手続きです。それによって、現在の借金の減額や、完済したものから一部返還してもらうことで、他の借金に充てるということが出来るかもしれません。無料相談を行っているところが多いですので、まずは過払い金請求の対象となりそうかだけでも確認してみるのもいいかもしれません。
パターン2 任意整理
次のパターンは任意整理です。任意整理は特に条件はなく、各社と話し合いで条件の見直しを行うものです。裁判所を通さないため、手続きが簡単というのがメリットです。自分自身でこの任意整理を行う場合、弁護士などの専門家にお願いする場合どちらでも、任意整理はあくまで「個々の話し合い」のため、法的根拠に基づいた命令のような「後ろ盾」がある訳ではありません。そのため、そもそも話し合いで結論が見いだせなければ任意整理は成立しませんし、任意整理による和解が成立出来ても大きな減額効果は期待出来ません。
任意整理は、借金総額が比較的少額の方や、ある程度支払える見込みはあるものの、継続的な返済がやや厳しい方はこの方法が適している場合が多いです。
個人で交渉を行う場合の注意
任意整理に限らず、個人で交渉を行う場合の注意点としては、貸金業者は今回紹介しているような各種債務整理の件で、弁護士などの専門家とのやり取りを年中行っているということです。そのため、専門知識がない専門家でないとなると、どこまで太刀打ち出来るかが心配です。簡単に言うと「舐められて」しまうということですね。弁護士費用も削減しなければならない程逼迫しているが、任意整理を選んでいるということは…と貸金業者側も色々とこちらの事情を想定しながら落とし所を考えます。これは、結局「個人で出来る」ということは個人「でも」出来るという意味でしかありません。自分が交渉しなければならない相手=貸金業者は法律の専門家ではないかもしれませんが、百戦錬磨であることは忘れてはありません。また、会社のお金とは言え、向こうからすれば「支払うお金」の話ですから、少しでも向こうにとって良い条件にしようと最大限交渉を行ってきます。
とは言え、「弁護士に任せること一択」をお勧めしているわけではありません。個人で交渉を行う場合にはそれくらいの気持ちで挑む必要があるということです。さらに、自身の状況だけでなく、相手のことも考えることが出来れば、より良い結果につながりやすくなるはずです。と、いうのが私自身個人で任意整理を行った経験から得た教訓でした…。
パターン3 特定調停
次のパターンは特定調停です。特定調停は先ほど紹介した任意整理の手続きを、裁判所を通じて行います。ただ、裁判所が何か判断を下すわけではなく、あくまで私と貸金業者の間に入ってもらい、調停を行ってもらいます。任意整理と特定調停の違いを整理すると以下の通りです。
[任意整理]
借りた人(もしくは代理としての弁護士・司法書士)-貸金業者
[特定調停]
借りた人(もしくは代理としての弁護士・司法書士)-裁判所-貸金業者
話し合いで決着出来なかった場合、成立しないことは特定調停も同様ですが、特定調停で成立した和解の内容は、言うなれば裁判所を証人とした決定事項ですので、非常に効力が強い決定事項となります。
そのため、返済が滞った場合、貸金業者はこのときの決定をもとに供与差し押さえや一括返済を要求することが出来ます。
一度、調停を行った上での決定ですので、その場合はこの差し押さえや一括返済を拒むことが出来ません。
特定調停を行うには、このまま返済を継続していくと「支払不能」になるおそれがある必要があります。
ちなみに、特定調停を利用できる人を「特定債務者」と言います。
「特定債務者」としての条件は、継続した収入があること。
かつその収入から返済に充てて、3~5年で完済出来ることです。
この3~5年というのは、その間だったらいつでもいいというわけではなく、特別調停で決められた期間となります。
特定債務者の条件を満たす方しか出来ませんが、任意整理よりは借入の総額が大きく、減額を行うことでしっかりとした返済計画が組めそうな方は特定調停が適しているケースがあります。
パターン4 個人再生
個人再生は、「裁判所に調停をお願いする」のではなく、借入総額を20%程度(1/5程度)への減額、原則3年(最長5年)の返済計画を裁判所に認めてもらう手続きをします。形式としては、裁判所に自分が条件を満たすかどうか、現状をしっかりと確認してもらって、個人再生の申請が通るかどうかという形となります。次に紹介する自己破産との違いとしては、減額か免除かという借入金額の圧縮比率の他、住宅などの一定価値以上の財産を手放す必要がありません。また、個人再生を行うには安定した収入が必要です。
そのため、現在の収支バランスでは目処が立たないくらい借入総額が大きく、任意整理や特別調停では完済までのスケジュールが見えない方。大幅に圧縮して一定の期間でしっかりと終わらせたい方に合いやすいパターンと言えます。
パターン5 自己破産
自己破産は、債務整理の中で最も強力な方法で、完全に返済が免除される一方、現在支払い不能であることの審査や、財産の制限等制限も強くなります。そのため、減額では返済計画の目処が付かない位の借入総額が大きい方や、借入総額の多寡以前に現在「支払い不能」である方に適しているパターンと言えます。
まとめると・・・
紹介してきた債務整理の方法を整理しましょう。過払い金請求は、他の債務整理とは少し性質が異なっており、結果的に債務整理につながりやすいのですが、過去の払いすぎた高い金利の返還請求です。※例えば、全て完済している方にとって借金減額にはなりませんが、該当条件を満たしていれば、過払い金請求が可能です。
任意整理と特定調停はあくまで各社との和解がベースとなります。他方で、今回の個人再生と自己破産は裁判所に申請を行い、申請が通れば強制的な命令を伴って貸金業者側に借金減額・免除を行います。個人再生と自己破産はともに官報に住所氏名が載るという点でも、任意整理と特定調停と異なります。そのため、過払い金請求は「自身が対象の期間・利率で借りているかどうか」から。
その他の債務整理の方法については、和解ベースの「任意整理・特定調停」のグループなのか、「個人再生・自己破産」のグループなのかというのを。まず大別して考えていく形がスムーズかと思います。
最後に・・・
前回は債務整理の方法について、一つ一つの方法の特徴を紹介してきました。そして、今回はそれぞれの債務整理の方について、関連性を重視しながらパターンを紹介してきました。次回はいよいよ実際に相談を行う際にどこに相談すればいいのか、どのように相談を行えばいいのか、ということを中心に紹介したいと思います。
この記事が皆さんの債務整理、そして、その先の将来に少しでも役に立つことが出来れば幸いです。