このシリーズでは、借金返済に悩む皆さんの気持ちが少しでも軽くなればと、借金返済や債務整理について紹介しています。ここまで、債務整理の種類や相談先について紹介してきました。今回は債務整理以前により身近な借金の「取立てや催促」について紹介したいと思います。
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取立てや催促がなぜ起こるのか
当たり前過ぎて怒られそうですが、なぜ取立てや催促が来るかというと、それは「返済が滞っているから」に他なりません。そして、実は取立てや催促には流れ、仕組みがあります。まずは、取立てや催促の仕組みについて詳しく紹介していきましょう。なお、大前提として、好きで取立てや催促をしている人はほとんどいません。「取立て」でイメージされる「怖い人」や脅しのような言い回しは、今は法律で禁止されています。
例えば、取引先の会社が未回収を出し、回収業務をしたことがある方は分かるかもしれませんが、「悪いくじを引いた」ぐらいの感覚しかありません。しっかり回収しなければならないですし、そもそも、この回収のためにかけている労力も時間も新しい利益を生み出す話ではありません。普通に入金してもらっていれば、何事もなく回収出来たものを回収するという全て後ろ向きの仕事です。さらに、借金回収では厳しく催促をかけたことで債務整理をされると、より一層手間と時間がかかる上、回収出来る金額も減るでしょう。このように、回収する側から見た場合、決して心躍るような話ではないことが分かると思います。
返済が遅れると給与が差し押さえられる!?
返済が遅れるとどうなるか、少しインターネットで調べると、「裁判所」や「差押え」など物騒な単語が出てきます。しかし、例えば「数日遅れたら直ちに差押え」とはなりません。とは言え、放置したままでいいのかというと当然そうではありません。流れとしては、以下のような流れになります。
1.携帯電話へ電話
何度か電話しても繋がらないと郵送物へ2に行きます。
ただし、いきなり2の郵送物のステップということもあります。
2.自宅へ郵送物
このときは「電話連絡のお願い」という内容です。
3.自宅へ郵送物その2
最終通告的な形で、期日までに連絡を頂けないと、一括返済・差押えをしますよという内容です。
この3までが、言うなれば「まだ後戻り出来るライン」です。結局、債務者へ連絡がつかないのでどんどん厳しい内容になっていきますが、発想を変えると、これらは業者側の視点で見ると「布石」なのです。携帯に何度か電話してもつながらなかったから、書面を自宅に送った。それでも、音沙汰がないので、最終通告を書面で出した。連絡を無視し続けていると、差し押さえまでのステップを一つずつ進める口実を貸金業者に与えてしまっているわけです。
何よりもまずは連絡を
先述のような心理で、業者側も回収に手間と時間をかけることは望んでいません。過去に遡ってグレーゾーン金利の返還を求められた過払い金請求によって大打撃を受けた貸金業は、業界として人手不足と言われています。そのような状況下で直接自宅に訪問することは非常に稀です。
この次に来るのは、いよいよ法的手続きに入ったことを知らせる裁判所からの「支払催促申立書」という書面になります。申立書が来る前に、しっかりと貸金業者からの電話に出る、出られなければこちらから連絡を取ることが最も大事です。業者側は連絡が取れず、単純にあなたがどんな状態かわからず困っているのです。今の状況とこれからの支払いについて相談を行いましょう。
返す当てがないから…
返す当てがあれば連絡を取るけど、実際返す当てはないし…。恐らく電話に出ない理由でこれが一番だと思います。私自身も非常に身に覚えがある話です。その場合は、真剣に債務整理を考えるのも手です。もちろん、貸金業者への連絡も必須ですが、今の状況を誠実に話すとともに、以前紹介したような法テラスの無料相談を利用するのがお勧めです。相談した上で「今の状態なら何らかの債務整理をするほどではない」という話だとしても、それはそれで気持ち的に大分違うと思います。
法テラスに相談した上で再度連絡するだけでも、「この人は本気で借金のことを考えている」「債務整理を視野に入れている」というだけでも意味があります。なぜなら、貸金業者は出来れば減額にされずにそのまま回収したいからです。
支払催促申立書が届いてしまったら?
しかし、中には既に支払催促申立書が手元に届いてしまった方もいるかもしれません。本当は、この段階になる前までに手が打てれば理想でしたが、既に来てしまったものはなかったことには出来ません。ここで最も大切なことは、今までの貸金業者からの連絡以上に“絶対に無視しない”ということです。
無視をすると、そのまま交渉もせずに「相手の要求を一方的に飲んでも構わない」という意思表示になってしまいます。では、そもそも支払催促申立書のことも含めてどうしたらいいかについて紹介したいと思います。
そもそも支払催促申立書とは?
「支払催促申立書」とは一体何なのでしょうか。まず、この書面は裁判所で発行される書面です。内容としては、お互いの話し合い、やり取りでは解決しなかった場合に、裁判所を通して支払い計画(金額や期間など)を取り決めるというものです。ちなみに、この申立書は個人間で貸したお金を返してくれない…といったような場合に我々一般人でも使うことができます。貸金業者側からすると、まさに「貸したお金を返してくれない」、本人に色々な方法で連絡を取ったが「連絡が取れず埒が明かない」といった状況で、裁判所に仲介をお願いした形です。裁判所に仲介を依頼して支払い計画を再度決め直すという意味では、「特定調停」と似ていますが、あれは債務者=借りている側からの持ちかけのため、貸金業者(債権者)は「応じない」という選択肢があります。しかし、今回は債権を持っている=権利がある側からの申立てなので、この催促申立書に「応じない」という選択肢は取れません。
異議申立て書
この支払催促申立書には、「異議申立て書」という書面が同封されています。支払催促申立て書は一括返済を要求する内容が書いていますので、それに対して「一括返済は無理」ということで「異議あり」という内容で提出します。万が一、身に覚えがない内容の申立て書が来た場合も同様に「異議あり」となります。異議申立書を提出した後は「訴訟」となります。但し、異議申立て書を14日以内に提出しない場合は、訴訟を挟まずに次の手続きに進んでしまいますので、注意が必要です。提出方法は直接持込みの他、郵送でも受け付けていますが、直接提出した方が確実です。郵送の場合は、配達記録等を使って確実に提出することをお勧めします。
異議申立て期間が過ぎてしまった!
異議申立てが出来なかった場合、「仮執行宣言付き支払催促申立書」というのが届きます。この申立書は「貸金業者が強制執行出来るようにしますけど、いいですか?」という確認書面です。こちらも異議申し立てが出来るので、ここが最終確認となります。
異議申し立ての後
異議申し立ての後、訴訟の手続きに移ると、日時が決まり、貸金業者側の要求とそれに対するこちらの回答を持って「口頭弁論」が行われます。その後、分割支払い等、「支払い計画の立て直し」ということになれば、司法委員立会いのもと、貸金業者と直接話し合いながら返済計画を決めます。なお、注意点としては、このときに「規定の回数以上支払いが滞った場合、一括返済出来る」条件や支払い延滞時の追加金利等も決められるため、計画はしっかりと現実的に継続できる金額で、遅れないように返済し続けていくことが大事です。
強制執行とは
ちなみに、異議申立てを行わなかった場合や、返済計画策定後に規定数以上遅れた場合に貸金業者が行う「強制執行」というのは一体どのようなものなのでしょうか。強制執行とは、いわゆる「差押さえ」で、財産や給与の差押さえのことです。しかし、財産の差押さえでは、生活に必要なものは差押さえ出来ません。また、給与の差押さえに関しても、税金や社会保険が引かれた手取り額の4分の1までと上限が決められています。もちろん、4分の1でも十分大きいとは思いますが、差押さえで「身ぐるみ剥がさられる」といったことはありません。
裁判所から書面が届くと、「もうおしまいだ」という気分になりがちですが、実際はこのようなものです。それを知るだけでも少し気持ちが楽になったのではないでしょうか。とは言え、出来れば「申立書」が届く前にしっかりと貸金業者と話をすることの方が重要です。そして、本当に支払いの目途が立たないのであれば、債務整理を行うほうが選択肢は多く、よりベストな道が取れるはずです。
違法な取立て
ここまでで何度か出てきているように、いわゆる強引な取立てというのは貸金業法によって、違法行為となりました。現在、大手の消費者金融などはまずこれらの違法な取立てはないと思いますが、こういった取立ては全て違法ですので、被害にあった場合はすぐに警察に相談してください。
返済が遅れていると、「悪いのは約束を違えた自分」だと強く思いがちです。確かに、返済の契約条件から遅れてしまっていますが、だからといって何でも言うことを聞くようなことをする必要はありません。特にこうした威圧的なことをする人間は、そうした「自分を責める生真面目さ」や「強く反抗できない臆病さ」、「法律への無知さ」を見極める目は人一倍敏感です。まずは、しっかりとした知識を身に着け、そうした人につけいられないようにするのが第一です。
・暴力的な言動、大声、乱暴な言葉の使用
「取立て」の怖いイメージの象徴ですが、これは今やると違法行為です。
他には大人数でおしかけることも威圧的な行動として見なされます。
・早朝、深夜の連絡や訪問
午後9時~午前8時の連絡については、電話だけでなくFAXも禁止されています。
精神的・肉体的に追い詰めて疲弊させるような行為はNGということですね。
なお、実際には「正当な理由なく」という前置きがつきますが、何が「正当な理由」にあたるかは法律で規定されていません。
「正当かどうか」は法廷で争った場合の判断になるかと思いますが、「一切連絡が取れない」や「勤務時間帯が夜間」などは認められるケースがあるかもしれません。
・勤務先など自宅以外の場所への連絡・訪問
法律では、債務者以外の人へ迷惑をかけたり、借金の存在を他の人に知らしめるような行為は禁止されています。
同じ理由で、自宅や自家用車、勤務先への張り紙、立て看板等も当然NGです。
このため、貸金業者からの書類は、自宅宛に親展で、しかも差出人は個人名等で送られてきます。ここまで注意して送ったものを家族の方が開封してしまったのは「不可抗力」と説明出来てしまいます。だからこそこうした形で送り、家族に借金の存在を知ってもらうことで返してもらえるケースを期待しているということもあるようです。
・本来の契約趣旨を超えた内容
保証人になっていない債務者以外の人(親族・友人など)に返済を依頼することは違法です。他社に知らしめている上、例えば親であっても保証人でない人間に返済の義務はありません。また、他社への借り入れによる返済や「何かを売って金を作れ」ということも違法です。
・債務整理通知後の取立て
債務整理を行う通知を受けたにも関わらず、取立て・催促を行うことは違法です。
最後に・・・
取立てや催促は、債務整理よりも身近な話だったと思います。何よりも大切なことは連絡を取ること。そして、もし、その連絡を取ることに気後れする部分があるのであれば、それは返済の目途がつきにくいことだと思います。もし、そうであれば、たとえ今月なんらかの形で凌げたとしても毎月苦しい状況が続くことが予想されます。そんな場合には、一度月々の返済額等これからの返済計画を考える上でも一度、法テラスの無料相談など、専門家へ相談してみてはどうでしょうか。
法的整理・差押さえはイメージほど強烈なものではなかったと思いますが、それでも法廷に行く必要がありますし、何より貸している側から「埒が明かないから」といって出てきた申立書です。そうした受け身のものよりも、こちらからしっかりと借金と向き合った上で無理ない計画を立てる。そうした方がより良い未来につながっている気がしませんか。
この記事が皆さんの頭を悩ませている借金の話に少しでも参考になれば幸いです。