大学に通うための資金を、「奨学金」という方法で工面する人も少なくありません。しかし。奨学金には返済が必要になるタイプのものが多く、就職してから返済できれば良いのですが中には返済に苦労する人も居ます。
さて、「返済が必要」となると、その性質は「借金返済」と同じものです。クレジットカードにしてもローンにしても、借金の返済が滞れば「ブラックリスト」の憂き目を見ることになります。
では、奨学金の返済に困った場合にはブラックリストに載るのでしょうか?また、返済に困ったときにはどうすれば良いのでしょうか?気になるこれらのポイントを解説していきます。
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■ブラックリストとは?
その前に、そもそも「ブラックリスト」とは何であるか、簡単に解説しておきます。
ブラックリストとは、そうした名前の名簿とかリストなどではなく、有り体に言えばある一定の状態のことをそう呼んでいます。一般的に、そのお店やグループ等の規約や決まりごとに違反した悪質な顧客等のことを「ブラックリストに載る」と表現することがありますが、こと借金関連でのブラックリストとは「借金を延滞等して、新規にお金を借りることができなくなる状態」のことを言います。
ブラックリストに載る状態を作り出しているのは、「個人信用情報機関」と呼ばれる組織です。これは、金融機関が個人相手にお金を融資するにあたって、その人の過去の借金等の情報を参照するためのデータベースのようなものを管理しています。各金融機関は、それぞれが加盟する信用情報機関から融資の申し込みをする人の情報を引き出し、「この人にお金を貸しても大丈夫か?」という判断を行います。
信用情報機関のデータベースには、過去の借金の履歴(いつ、いくら借りて、どのように返済したか、など)が掲載されているのですが、仮に「延滞」「債務整理」のように、健全な返済とは言い難い事情が発生した場合は、それそのものではなく、特定の表記をします。金融機関はそれを見て「あ、この人は過去に延滞か債務整理をしている=お金を貸してもきちんと返してもらえないかも」と判断します。
基本的に、まっとうな金融機関であれば、ブラックリスト状態の顧客に対して融資は行いません。なので、ブラックリストに載ると、しばらく借金ができなくなってしまうのです。
■奨学金の返済が滞ればブラックリストに載る?
では、一般的な金融機関からの借金とは少し性質の異なる奨学金の返済遅延などに関してはどうなのかと言えば、これもブラックリスト扱いの対象になります。
奨学金事業を運営する「日本学生支援機構」によれば、まず奨学金の返済を延滞した場合、「本人」「連帯保証人」「保証人」に対して文書および電話による督促を行うと明言しています。この時点では、まだブラックリスト扱いにはなりません。
では、どのタイミングでブラックリスト扱いになるのでしょうか。公式サイトによれば、奨学金の返済を延滞して3ヶ月以上になった場合、個人信用情報機関に個人情報が登録される、つまりブラックリスト扱いになると明言されています。また、新たに返済を開始する場合は、返済開始後6ヶ月経過時点で延滞が3ヶ月以上の場合に個人情報が登録されるとしています。
■ブラックリストに載ったらどうすれば良い?
次に、既に奨学金の返済が滞って3ヶ月が経過している場合について解説します。日本学生支援機構から信用情報機関にその旨が報告されると、ブラックリスト状態となり、しばらく追加の融資を受けられなくなります。有り体に言えば、暫くの間あらたにクレジットカードを作ったり、住宅ローンを組むことができなくなるということになります。
では、永久にその状態が続くのかと言えば、場合によってはそうなる可能性もあります。ブラックリストは、基本的にその原因が解消されてから一定期間で情報が削除され、ブラックリスト状態が解消されます。では、奨学金の滞納によるブラックリストはと言えば、情報の記録は5年間、その起算は滞納状態が解消されてからです。要するに、奨学金の返済が滞っている限り、ブラックリスト状態は解除されないのです。
延滞が3ヶ月続いてからすぐに滞納状態を解消すれば、そこから5年間でブラックリスト状態は解消されます。なので、最短で5年間、長ければ半永久的にその人のブラックリスト状態は解消されないのです。
■奨学金の返済が難しい場合は?
では、順調に奨学金を返済することが難しいと判断した場合はどうすれば良いのでしょうか。日本学生支援機構の公式サイトでは、いくつかの制度を利用できる旨が記載されています。
まず最初に、規定通りの返済は難しいけれど「減額した借金ならば返済を継続できる」という場合です。この場合は「減額返還」の制度を利用できます。この制度は、災害や傷病、失業などの経済的な困難などの事情が生じた場合に利用できます。効果としては、一定期間、当初割賦金を2分の1または3分の1に減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長するという仕組みです。つまり、返済する総額は変わらない代わりに、毎月の負担を少なくできる制度です。また、既に延滞が発生している場合には利用できません。
次に、返済が困難になったために「一定期間、返済を待って欲しい」という場合です。上記と同じように、災害や失業などの事情が発生した場合に手続きし、一定期間の返還先送りが可能になります。この方法も、返還すべき金額が減少するわけではありません。
最後の方法だけが、返済する金額が免除される方法となります。その条件は、第一に「本人が死亡した場合」や「本人が精神もしくは身体の障害によって労働能力を喪失した場合」です。この場合、手続きすることで返還未済額の全部または一部の返還が免除されます。それ以外にも、何らかの理由で労働能力に高度の制限が生じた場合もこの制度の対象となりえます。
また、同様に奨学金返済を免除してもらえる条件としては、「教育または研究の職に就いた場合」が挙げられます。これは、平成15年度以前に大学院の第一種奨学生に採用となり、奨学金の貸与を受けた人が所定の要件を満たした状態で教育または研究の職に就いた場合に、返還未済額の全部または一部が免除される制度です。
■奨学金を債務整理することはできるの?
次に、奨学金の返済に困った場合に、上記の制度ではなく一般的な借金と同じように「債務整理」する方法について解説します。
債務整理とは、借金の返済に困った際に、いくつかの方法によって返済の負担を軽減する方法です。一部、この方法では解消できない借金問題もありますが、奨学金の返済には債務整理を適用することができます。
利用できる債務整理は、第一に「任意整理」です。これは、裁判所の介在なしに、債権者との交渉によって返済の負担を減らす方法です。一般的に、債務整理の中では返済軽減負担能力はそこまで高くない方法ですが、自由度が高い方法であるという点がメリットになります。複数の借金を抱えている場合であれば任意整理の対象とする債権者を選ぶことができるので、例えば奨学金以外の借金について債務整理を行い、借金返済全体から見て負担を減らすというアプローチも可能です。
次に「個人再生」です。自己破産ほど借金の負担を減らす絶大な効果はありませんが、任意整理では十分に負担を減らせない場合にお勧めの方法です。任意整理と比較すると手続きが面倒になるという点はどうしても否めませんが、減額できる効果はそれなりに期待できます。
最後は「自己破産」です。多くの方がご存知の「借金を全てゼロにする」ことができる債務整理の一種です。奨学金もその対象であり、個人再生でも十分に返済の負担を軽減できない場合にはこの方法しか選べない可能性もあります。借金を減額できる能力は全ての債務整理の中で最大クラスなのですが、その分だけデメリットも大きいです。まず、財産の殆どを手放さなければならないということです。一部を除き、資産価値の高い財産は売却して返済に充てることになります。もう一つは、自己破産は裁判所が介在するので任意整理のように交渉失敗はありませんが、手続きの不備や借金の状況によっては「免責」を受けられず、借金をゼロにできない可能性もあります。
■奨学金を債務整理する際の注意点
奨学金の返済負担軽減を債務整理によって実現する際には、いくつか注意しなければならないことがあります。まず、債務整理を行う場合はブラックリストに載ることになります。場合によってはこの先10年ほど新規融資を受けられなくなる可能性がありますので、近い将来にクレジットカードの作成や住宅ローンの申込を考えている場合は別の方法で解決しなければなりません。
もう一つ、最大の注意点は「保証人に迷惑がかかる」ということです。奨学金は、親戚の誰かに保証人になってもらうケースがほとんどです。債務整理の対象となった奨学金などの保証人付きの借金は、保証人に対して返済の催促が向かうことになります。保証人に対して迷惑がかからないようにするには、任意整理において奨学金を交渉から除外することです。個人再生および自己破産は特定の債権者を除外できず、奨学金以外をその対象にしたい場合でも容赦なく奨学金も対象になり、保証人に迷惑がかかります。
どうしても奨学金を債務整理の対象にしたい場合は、事前に保証人に対して十分な説明をして、同意を得ておくことをお勧めします。事前に何の説明も無いまま奨学金を債務整理の対象にすると、保証人との人間関係に大きな亀裂が入ることになるでしょう。
■最後に・・・
奨学金を返済できない場合は、日本学生支援機構が定める制度を利用するか、債務整理をする、もしくは親戚や知人の助力を得るといった方法を選択しなければならなくなります。返済できないまま奨学金を放置すると、ブラックリスト扱いになり、保証人に迷惑がかかってしまいます。
債務整理を考えるほどに奨学金の返済に困っている状況であれば、弁護士や司法書士といったこの手の専門家に相談することもお勧めです。相談だけであれば無料で利用できますので、最善の対処法を知るためにも弁護士や司法書士の力を借りることにしましょう。